―――キィン…ッ。
「う、ぁ、…っ」
頭を内側から破壊するような音が辺りに響いた。
雲雀の前に仁王立ちしていた倫子は、その衝撃に耐えきれず瓦礫に膝を着く。
いたい。
―――ィイイイイン…。
針金を弾いているかのような音だ。
形を持たない筈の音が、身を引き裂こうとする。
あちこちで悲鳴が上がっていた。
「…どうやら、ここだけじゃないようだね」
雲雀は平然とした顔で瓦礫から腰を上げると、頭を抱えたままの倫子の腕を無理矢理引いて支え起こす。
(…おま、なん、で、平気なんだ、よ!)
思わず脳内で叫べば。
「雲雀様だからだよ」
そう言って笑った雲雀を、久しぶりに見た気がした。
先程の雲雀とは違い、やっと「雲雀」らしくなってきたことに、倫子は気付かれないように安堵した。
(そうでなくちゃ、らしくない)
思わず息を飲んだ、消え入りそうな美しい表情を思い浮かべ、浅く息を吐く。
そんな倫子を俵のように肩に担ぐと、雲雀はそのまま足早に歩き出した。
「どこ…に」
高音の超音波が突き刺さる。
耳に痛い「音」に翻弄されつつ問いかければ。
「最上階だよ。こんな中央でやりあっちゃ、被害が大きくなるだけだから」
―――やり合う?
「…ちゃんと集中して探ってみたら」
すぐ、わかるよ。
そう言った雲雀の脚が外へと崩れ出していた鉄骨の先に掛かる。
眼下、随分と下のほうに、海。
真下のエントランスで「音」にやられているアダム達が、蟻のように見えた。
こんな高さから落ちれば、海面はコンクリートのような硬さと化すのだろう。
(うわ…!)
しかし倫子の血の気が引く前に、雲雀の脚が鉄骨を蹴った。
緩い跳躍のわりにそれは高く高く、真上一直線に最上階へと伸び、足場の悪いそこに倫子は荷物のように投げ飛ばされる。
「ぎゃっ」
物騒な音を立てて着地した倫子とは違い、雲雀は音もなく瓦礫の山へと降り立つ。
高さは既に、天に届きそうなまでになっていた。
ビリッ…。
瓦礫から起き上がり、雲雀に抗議しようとして開いた口から言葉がでない。
「音」は相変わらず続いているのに、背後に突き刺さる白濁に、呼吸を忘れた。


