「倫子さんっ」
倫子が上げた悲鳴と共に、そこへ丁度帰ってきた真鶸の歓喜の声が重なる。
「まひわっ」
ぎゅう。
惜しげもなく真鶸を抱く姿は兄としては悪くはないがしかし、男としては面白くない。
僕には照れるくせに。
(意識をしてる顕れなら、まぁいいけど)
やはり、先は長いらしい。
「あ、あの、お客様がいらっしゃってるんですが…」
倫子にぐりぐり頭を撫でられていた真鶸が慌ててベッドを飛び降りた。
その台詞にゆらり、扉へと視線をやれば。
「…なに、君」
半開きの扉の影に立っていた金髪が揺れる。
現在進行形で気に喰わない男であろう、合衆国アダムチーム「マリア」のロビンだった。
自ら赴いておきながら、なにが気まずいと言うのか、斜め下に向けられた顔は困ったように眉根を寄せている。
「あんた…」
雲雀より一拍遅れて彼に気付いた倫子が喉を鳴らす。
先程の緊迫した空気を思い出し体が反応したのか、強ばった肩を小さく震わせた。
真鶸が倫子を庇うように立ち、雲雀に目配せをする。
「なんの用?」
敵ではないのだろうが、気に喰わないものは気に喰わない。
当初、あれほど倫子を毛嫌いしていた男が、最近は無意識だろうが視線で彼女を目で追っていたりする。
「マリア」のメンバーであるジニーというこどもに関しては、ストーカー紛いの真似をする始末。
それに加えて今日のセクション。
あの倫子を憐れむような目が心底、雲雀は気に喰わなかったのだ。
(同情して橘と闘った。…馬鹿げてる)
あのなにか含むような眼が倫子に向けられているだけでも不愉快だというのに。
なにも知らない、愚か者の眼。
(その無知加減が、橘には優しいと、わかっている、から)
「…いや、用というほどのものでは、」
普段の彼らしくない歯切れの悪い口調。
不思議そうに首を傾げている倫子の視線すら、雲雀を苛立たせる一因だった。


