「…俺にさせてくれ」
とにもかくにも、俺が相手をするのが一番だ。
(適当にあしらって適当に気絶させちまえば)
大した怪我にもなるまい、とカツリ、足を踏み出した時だった。
「―――甘くみないほうがいいよ」
横からの忠告に、進みかけていた過信の足を止める。
その台詞は意に反するものだ。
思わず、片眉を上げた。
「俺が負けるって?」
「それはないだろうね。橘は馬鹿だから」
ここで遠くから、「誰が馬鹿だ誰がっ」と倫子が叫んだ。
「…ただ、同情心で相手をしようものなら、痛い目を見るよ」
クツリ、笑う。
そのなにもかも見透かすような笑みが、同情という言葉が、あまりにも不愉快だった。
それを振り切るように足を踏み出す。
その信頼しきった顔が、胸クソ悪くて仕方がない。
(…なんだってんだ、タチバナも雲雀も、俺も!)
「タチバナミチコ!」
頭の中の葛藤を振り切るように、ロビンは大声を出す。
ざわついていたアダム達は今は静かに、固唾を飲んでこちらを見守っていた。
ロビンがタチバナミチコの相手であることに不満はないらしい。
(…まあ、あのダンパのことを思えば、な)
初対面の橘倫子に、散々好き勝手にされた。
きっとロビンが、彼女をこてんぱんにしてくれると考えているのだろう。
(なにが痛い目見るよ、だ!俺がタチバナミチコなんかに負けるか!)
周囲のアダム達も皆、そう思っている。
「…、」
主役二人を円形に取り囲むアダム達の中心で、二メートル半ほど離れて向かいあう倫子とロビン。
倫子はゆるり、首を傾げた状態でロビンを見ていた。
ざわめき始めた周囲はひとり、またふたり、「コロセ」コールを唱え始めている。
向けられているのは、当然、倫子だ。
「…なんであんたなのさ」
疑問を含めつつ、呆れたような口調。
周囲から狂気を向けられているというのに、だらしなく立つ姿からは、緊張は見られない。


