鐘鬼や双子によって破壊されていた部屋なのだが、主人が不在の間に修繕は終わったらしい。
ベッドへとそのまま落とされて、一体何事だと思う暇なく、正面に雲雀が膝立ちで立った。
澱みない眼で見据えられ、暫し、呆然。
そんな倫子に呆れるように、雲雀が手を伸ばしてくる。
「、」
なにをするのかと身構える前に、頭から全身に掛かるバスタオルで以て体を拭かれた。
―――アレ?
「…あの」
突っ掛かる声が、無駄に霞んで聞こえる。
「なに」
雲雀はさも当然だと言わんばかりにそう答えた。
「なんで、拭くの?」
長い睫毛がはためきながら、タオルを倫子の身体に密着させる。
「濡れてるからに決まってるでしょ」
「……あぁ、そうか」
「そうだよ」
「………」
「大人しくして」
「…いや、ちょっと待て」
我に反って、慌てて雲雀から退いた。
危ない、懐柔されかけた。
ベッドの上を高速で這って、壁へと身を庇うように凭れれば。
「逃げないで」
ぶっすりと不機嫌そうな雲雀に睨まれた。
なんかアレだ。
(…雲雀が、おかしい)
ゴクリ。
「おかしくないよ」
「…読むなよ」
(まさか酒でも飲んでるとか………ハッ!まさか私の電流が頭に…!イカれたのか!)
「酒も飲んでないし君の電流なんか蚊に刺されたに等しい」
「だから読むなって。何気なく失礼だしなお前。よりによって蚊かよ!」
体育座りをして、できるだけ身を縮める。
大きなバスタオルで全裸をすっぽり隠せば、多少は安心した。
正面には、相変わらず端正な顔。
―――見るな。
「…出てけよ」
「…なんで」
なんで、って。
「…、」
見るなよ。
そんな眼で、見るな。
逃げ出したい。


