「僕のものを無断で拝借しておいて、ただで済むと思ってるの?」
バラバラに散った木片が舞う中―――誰が物だ、との囁きは無視して―――低く唸れば。
威圧感に怯む双子に向かってすぐさま駆ける。
考える暇はやらない。
決着は、すぐだ。
「…雲雀!」
背後から悲鳴染みた怒鳴り声が届く。
(わかってる、殺したり、しない)
「…っ」
気付けば雲雀を目の前にした双子が目を見開いていた。
それでも隙を与えず、両腕を勢いよく振り上げる。
ガツン、と鈍い音を立てて、並ぶ双子の脳天に拳を直角に打ち落とした。
この一発で終わらせるために、思いきり両拳に重力を圧しつけて。
双子は白眼を向いたかと思えば、同時にぱたりと床に倒れた。
こんなところまで双子なんだ、と場に似つかわしくなく暢気なことを思う。
それを見ていた倫子が、はっ、と我に返って駆け寄ってきた。
因縁の男との決着はもう割り切ったらしい。
ぐちゃぐちゃの顔に涙の跡は残るが、意外にもすっきりした顔で雲雀を見上げてきた。
「殺すなよ!」
「殺してない」
「頭あぶねぇじゃん!」
「撲れば治るかも」
「なにが!?」
「君の弱い頭」
「お前はその残虐非道なとこ治すべきだけどな!」
「殺す」
なんだか、物凄く久しぶりに口喧嘩なんかした気がする。
(このギャンギャン煩い声、久しぶりに聞いた…)
決して、耳に馴染むわけではないのに。
それなのに、胸に染みる。
(頭がおかしくなりそう、こんなの、)
この感情が、本当に自分の感情であるのかすら、わからない。
(橘の瞼が瞬く度に、息に喉を揺らす度に、痛々しい、赤い痕まで、全部)
全部、
―――なに?
(こんなの、どうしていいかなんて、僕は知らない)


