(それなのに、)
『黙れ、このワンマンが!』
『お前なんかクソスズメで充分だ!』
『…ぶっ殺してやる』
思い返せば、なんと品のない言葉の数々だろう。
思わず閉口した時すらあった―――あの、雲雀が。
「、」
馬鹿馬鹿しさに、思わず口角が吊り上がる。
その品のない言葉の数々に、実直過ぎる視線に、無駄だと解っていながらに挑む、その無力な力に。
騒ぎ立てるあの煩わしい、声すら。
(…愉しかったんだ、きっと)
あんな眼を、初めて向けられた。
周囲に群がっていた畏敬の眼とも違う。
桐生の支配欲に満ちた欺瞞の眼とも違う。
仮初めの両親から向けられる、躊躇いの眼とも、違う。
―――僕を殺す眼。
あの侮蔑を含む、怒りを露にした無謀な奥に、いつも。
(望むものは、)
「…まさか君が、こんな早くに出向いてくるとは思わなんだよ、雲雀くん」
気配もなく現れた男が、そう長たらしく言葉を紡いだ。
聞き知る声だ。
しかし、雲雀はさして驚いた様子もなく、そちらを見やる。
白濁の片目は、相変わらず虚ろに世界を見下していた。
―――幾田桐生。
人類最初のアダムの血を引く者。
その見た目だけは好々爺である口許を歪め、中央に置かれている椅子に座していた。
「蛇を殺したのかね?憐れなものだな。あれでも君を慕っていたのに」
懐から取り出した葉巻を咥える。
じり、と音を立てて、その独特の香りが室内に立ち昇り始めた。
それを眺めながら、雲雀はやはり表情を崩さない。
「…生憎、信徒を愛でる趣味はない」
生物の「死」など、雲雀にとってそう重要なものではなかった。
―――「生」が在るならば、「死」に行き着く。
何故、畏れる必要があるのか。
終わるものとしての、当然の摂理。
「死」の真髄を見極めず、ただ怯え、醜く「生」に縋りつく生き物が雲雀は嫌いだった。
怯える彼らを滅茶苦茶に踏みつけて、気付く間もなく「死」の淵に突き落としてやりたくなるくらいには。


