「…、しょうき」
癖のない黒髪が潮風に揺れて、私を痛めつけてゆく。
「…タチバナ?」
(こんなにも、似てるのに)
あぁ、雲雀には、もう届かないのか。
「なにしてる」
「…なにもしてないよ」
脱力した。
期待したぶん、脱力感が酷い。
(…期待するほうが間違ってるのに)
「服は」
倫子の裸体に首を傾げている鍾鬼の髪が、ゆらゆらたゆたう。
(まるで私みたいだ)
支えのない、真っ直ぐ立てないでいる、無力な生き物。
「…そこらへんに埋まってる」
鍾鬼が瓦礫を掻き分けてこちらに向かってくる。
「…ぅう、」
ガラガラと崩れる部屋の骨組みだったものの隙間から、不法侵入者達の呻き声が漏れていた。
(なんだ、死ななかったのか)
ぼんやりと、頭の端でそう考えていた。
(…なんかもう、いいや)
投げやりに瓦礫を見やれば、いつの間にか近付いてきていた鍾鬼の腕が伸びてくる。
差し出された手に、何故、縋りたいと、思えなかったのか。
「…タチバナ、泣いた、のか」
「過去形じゃねぇよ。現在進行形で」
「…な、な、」
「…うん、」
「泣いて、る?」
「よし」
伸びてきた真っ白な指が頬を撫でた。
ぞろりと擦れたのは、塩辛い涙のせいだ。
「…タチバナ」
「なに」
「けが、した?」
立ち尽くしていた身体をゆっくりと瓦礫の山から下ろされて、顔を上げられる。
よく見れば見るほど、「彼」に似ていた。
(息苦しい)
まるで、黙って悪いことをしているような気分になる。
「見せて」
「いいよ、つか見るな」
「女の体、飽きたから、だいじょぶ」
「よく言うよ、カタコトめ」
黒い頭がゆっくりと降りてゆく。
力なくぶら下がった両腕を正面から掴まれて、まるでマネキンのように大人しくするよう促された。


