「この痕、なに?」
「まるでフランケンシュタインみたい」
「ふらんけんしゅたいんって、何?」
「戦前の物語に出てくる、可哀想な人造人間だよ」
「継ぎ接ぎの痕が残る、」
醜い化け物。
『こんなの、倫子姉ちゃんじゃ、ない』
嗚咽が聞こえた。
物言わぬ化け物になった私の聴覚器官に届いた、愛しい、妹の。
それは幻だったのに。
『気持ち悪い、気持ち悪い…こわい』
愛が、私を拒絶する声。
「、」
腰に低い温度が触れる。
見えなくてもなにかわかる金属の感触に、息を飲む暇もなく。
「、つぅ」
引かれた刃先に、摩擦により切り裂かれた皮膚がいやな音を立てた。
「真っ赤…」
感嘆が漏れる。
下品に滴る血液を見て感動できるなんて、大した神経の持ち主だ。
「この痕を、なぞってみよう、か」
うっとりと吐き出された言葉に、全身から血の気が引く。
「なんの痕か知らないけど」
「もっと目立つようにしてあげる」
「顔にも付けてあげようよ」
冷酷に、無邪気に嗤う気配に、身の毛が弥立つ。
声が、蘇って。
『この施術痕は、絶対に他人に触らせるな』
継ぎ接ぎのなり損ない。
『俺が全神経傾けて縫合したんだ。───もしまた』
もしまた、その傷が開くことがあれば。
『―――化け物、』
あぁ、時間が遡っていく。
きりきりとナイフが鳴いた。
或いは私の皮膚だったのか。
腰から太股に掛けて走る皮膚の裂け目が。
(…いやだ)
「やめろ」
(いや、だ)
際限なく続いた悪夢は、終わった筈なのに。
(また、)
(今度こそ本当の、化け物になるよ)
痛みは確かに、過ぎた筈なのに。
込み上げる恐怖を、彼らは知らない。
心臓が今にも停止してしまうのではないかと恐れる震えを、彼らは知らない。
───誰も、知らない。
皮膚が鳴く音も、全身の筋が切れて肉という肉が不規則に収縮してしまう痛みも、体の造りが、内部からひきつり返される恐怖を。
「、」
最果ての、痛みを。
唾液を、体液を、尿を滴らせて、滅茶苦茶に組み替えられていく細胞の痛み、を。
(誰も知らない)
「…っ、───、ぅ、あ」


