「…奥田先生、まだですか」
倫子が壇上に呼ばれ、采配が始まってからかれこれ二十分は経過していた。
いい加減疲れはじめた倫子に構うことなく、奥田は淡々と采配の糸を探っている。
しかしとうとう、他の教師から催促が出た。
「あ、梶本先生ぇ、すんません。ちょっと、導き出た結果が信じられなくて」
奥田は倫子から手を離すと、頭をぽりぽり掻きながら軽薄そうに謝罪する。
それを聞いた見慣れぬ教師―――梶本が驚いたように声を上げた。
「つまり、結果は出てるんですか?」
目を見開いて奥田を見た梶本は、明らかに不可解だといわんばかりである。
覚えのない教師だ。
恐らく東部の人間だろう。
こちらを見据える目が、まるで不快なものでも映しているかのように底意地悪い。
そんな梶本にニヘラと笑いかけた奥田は、やる気なさげに倫子の頭を撫でた。
「出てますよう。ミチコの手ぇ握った瞬間から出てましたよぉ。そりゃもう、稲妻の如くビリビリね」
「それでは何故、こんなに長く」
梶本はいかにも不可解だと言いたげな顔を奥田に向けている。
そうしてちらりと倫子を一瞥して、わざわざ鼻穴を膨らませて嘲笑を浮かべた。
「…私はてっきり、彼女の能力があまりにも微弱で采配まで行き着かないのだと」
侮蔑の一瞥と共にそう吐き出した梶本に、倫子の顔が自然とひきつっていく。
その言葉に、東部の生徒達が笑いを以てどよめいた。
ひくりと引きつらせた顔で睨みつければ、梶本は肩を竦めて嗤う。
(ム、ッカつく…)
苛、と怒りのまま拳を握った時だった。
「―――残念ながら違いますよ。橘倫子は、立派なアダムですから」
教師らしからぬ差別的な梶本の言葉に、奥田は冷ややかに答えて見せた。
ミスレイダーも、自分の生徒をバカにされたことが不愉快なのか隠そうともせず顔をしかめている。
西部の教師達から歓迎されない視線を向けられ、態度が大きい梶本は笑みを潜めて咳払いした。
「それならば、早く発表を」
誤魔化すように奥田を促すが。
「んー…」
しかし促されたにも関わらず、奥田は天を仰いで渋って見せた。
「一体、なにを躊躇っているのです?」
何故か采配の結果を言い渋る奥田に、梶本は不審げに眉を寄せている。
他の教師や生徒達も、壇上の二人目に訝しげな視線を向け始めた。


