「味噌汁とご飯。あ、漬け物はなしで」
夕食を各々にとる生徒達の視線を集め、倫子はいけしゃあしやあと給仕の女性に言い放った。
その後ろに立つ雲雀は無表情を崩さずとも、呆れている。
「もっと栄養があるものを食べたらどうなの」
何故よりにもよって。
明らかに猫まんまをする気だ。
「食いたいもん食うのが一番」
脱力した右腕をぶらぶらさせながら、食事がカウンターに並ぶのを待つ。
「見なよ、あの腕」
「うわ、無惨…」
ざわめきの中に潜む中傷を気にした様子もない。
鼻歌を歌いながら味噌汁と白米を待つ倫子の姿に、雲雀は人知れず溜め息を吐いた。
『飯かっこみゃ治るよ』
保健医の話を疑いたくなる。
仮にそうだとしても、本当にこのメニューでそれが実証されるのか。
「雲雀さま、なにをお作りしましょうか?」
給仕が倫子から雲雀に目を向けた。
明らかに彼女の仕事には不必要なしなをつくっているのだが。
「海藻サラダと、…火を通したレバーでなにか作って。スープはコンソメ、野菜を」
「かしこまりました」
一生徒にわざわざ一礼し、女性は厨房に雲雀のリクエストを事細かに伝えた。
「へぇ、雲雀、レバーとか食べるんだ」
厨房を覗き込みながら目を丸くしている倫子に、雲雀は眉間に皺を寄せた。
「どういう意味?」
「内臓系とか食べなさそうだからさ。こってりした味よりあっさりした味のほうが好きそうだし」
(…生物に由来した不純物がなさそうだもんな、この綺麗な体の中は)
透き通るような肌を見つつ、倫子は出来上がった味噌汁と飯を手に取る。
「…まぁ、間違いではないけどね」
「ふうん?」
(ならなんでレバー?いきなり健康志向に転向?)
できあがった夕食を手に席へと着く。
雲雀が一緒だと、皆避けてくれるから席取りの必要がなくて楽だ。


