―――気が付けば、ボロボロの朝比奈を抱き潰したまま眠っていた。
「あ、あー…」
粟立つ朝比奈の肌を目にして、自分がなにをしでかしたかやっと理解する。
(あぁ、なんて馬鹿な真似を)
「…っ、」
緩く巻かれた長髪が、武藤の指に絡まっていた。
相当乱暴にしたのか、固まっていた指を解けば抜けた髪糸が数本、指先についてくる。
「あー…」
蠢く筈の罪悪感より、今、胸を占めるのは満たされた征服欲。
男として最低な真似を。
下らない独占欲やら嫉妬やらに飲み込まれて、か弱い者を無理に捻伏せる。
獣染みたその行動に、正当な理由も満たされる結果もついてこないと、わかっているのに。
「わりぃ…」
ましてや、謝罪なんて。
朝比奈の柔らかな体を下に抱きながら、武藤は枕に頭を埋めた。
いつの間にベッドに移動したのか、自分の周到さに呆れながら。
「、ぁ…」
俺が溜息を吐いたと同時、泣きすぎて枯れた声が耳元で漏れた。
目を覚ましたらしい。
上体だけ持ち上げて覗き込めば、寝ぼけ眼のまま視線をさ迷わせている瞳とかち合った。
乱れた髪が肌に張り付いて、煩わしそうで。
「…ひな」
なるべく柔らかに、囁くように、呼べば。
「っ、」
反応して、剥き出しの肌が硬直した。
固く強固な腕から逃れようと捩られた身体を抱き締めれば、泣いた、また。
本人にそれを堪える気はないらしく、透明な液体はとめどなく枕に零れ落ちては吸い込まれていく。
(あぁ、もう…)
泣かせた原因は自分であった筈なのに、今はそのことが酷く煩わしい。
身動きが取れないでいる。
罪悪感と満足感に板挟みにされて、まるで。
ひたすら涙を流す彼女を前に、なにも、できないでいる。
慰めの代わりにもならないが、せめて小さな嗚咽を閉じ込めたくて、優しく、できるだけ優しく、口付けた。
「…っ、痛かった」
うん。
「ごめん、な…」
「う、え…」
あぁ、涙は止まらない。


