「はーい……、わー」
カチャリ。
白い扉を開ければ、二十人は軽く越えた東部、西部箱舟が入り交じった生徒達が部屋の前に塊を作っていた。
各々、手にはなにやら見舞い品らしきものが握られている。
(貢ぎ物…?)
「なにかご用ですか」
先頭に立つ東部の男子生徒に尋ねるが、男子生徒は鼻を白ませてこちらを睨んだまま口を開かない。
(私とは話すのも嫌だってか?)
しかしこちらも請け負った手前、引くわけにもいかない。
倫子は男子生徒が口を開くまで、扉に凭れて待つことにした。
その待ちの体勢にますます鼻を白ませた男子生徒が睨み付けてくる。
ざわめきの中、数分経ってからやっと根負けした男は口を開いた。
「……雲雀さんはいらっしゃいますか」
きたー。
「留守です」
素直に言えば、群がっていた全員からブーイングを喰らった。
「嘘吐いてんじゃねぇよ!でめえはさっさと引っ込め!」
「あんたの顔見るためにわざわざ来たんじゃないわ!」
「雲雀様を出しなさいよ!」
いやそんな、出しなさいよと言われても。
「…あのー、貴方達の雲雀さんはただ今お休み中ですので、静かにしてもらわないと私が殴られるっつーか…」
嘘も方便。
さっさと散ってくれ。
こっちは腹が減って死にそうなんだよ。
雲雀が休んでいると言えば、途端に静かになる従順な群集。
(……キモチワルイ)
そのドエムなまでの心意気が、倫子には理解できなかった。
「そゆわけで、」
じゃ、とドアを閉めようとした時だった。
「…やっぱり地下水脈を引き出したことが原因かしら」
「流石の雲雀さんでも、水脈を引き出すなんて真似、体に障るわよね」
生徒達の間から湧き上がる話題に、心当たりがある。
(…あぁ、雲雀がしたことになってんのか)
まあ、妥当なとこだ。
彼らにすれば、雲雀は「神様」で、倫子は「落ちこぼれ」なのだから。
誰に褒められたくてやったわけではないので、彼らの勘違いを正す気はない。


