じ、と見つめてくる眼はいつも以上に深淵で読みがたく、何事かと口を開く前に。
「…魘されてたよ」
至極真面目な視線と台詞に、倫子は間抜けな顔を浮かべてしまった。
「泣き出したり叫び出したり暴れ出したり、」
雲雀から溜め息。
「殴ってやっと静かになったけど」
「あんた人が寝てる間になにしてくれてんの」
痛む体に鞭打って、倫子はゆっくりとベッドから這い出した。
(…体力も戻ってきたし)
お腹も空いた。
自室から雲雀の部屋へと出て、簡易キッチンへと向かう。
しかし、ドア向こうの騒がしさに首を傾げた。
「なんか部屋の外が騒がしくない?」
後ろに立つ雲雀に問えば、あぁ、とうんざりした相槌が返ってきた。
「来客が絶えなくてね」
「出ないの?」
「僕が進んで相手をすると思う?」
「でも五月蝿いじゃん。あんたが散れって言えば、すぐ散るでしょ」
「いや。君がして」
ガキかよ。
しかしザワザワと扉越しに響く喧騒は確かに耳障りだ。
しかも、なんだか増えていってないか?
これでは落ち着いて腹ごしらえもできない。
仕方なしに扉へ向かうと、雲雀が満足げに微笑んだ。
「…いざとなったら、どうにかしてよね」
このざわめき、相当の人数が集まっているに違いない。
倫子が出たらそれだけで顰蹙ものだというのに。
「約束するよ」
にこり。
胡散臭い笑顔になんとか後押しされ、倫子は溜め息を吐いた。
どうでもいいが、寝起きで髪が跳ねていることにも涎の跡が付いてることにも倫子は気付いていない。


