(信じられない…)
確かに水脈はこの地中を縦横無尽に走っている。
しかし戦争の影響で、多くの水脈は汚染されてしまったのだ。
だからこそ、国は各地に大規模な浄水場を設けている。
汚染された水を飲み水にするために、である。
しかし倫子は、その汚染された水脈の中から汚染されていない奇跡的な一本の水脈を辿ったのだ。
(…本当の落ちこぼれなら、絶対にできない芸当だ)
芸当などと、一言で片付けることすら憚られる。
雲雀が倫子の馬鹿さ加減を再確認している中、子供がこくりと喉を鳴らした。
懐に納めていたらしい小さな湯呑みに注いだ水。
たった今、倫子が引き出した間欠泉から注いだ水である。
「…おいしい」
その子供は頬を赤くさせて倫子を見た。
それを聞いた他の子供達も我先にと口に水を含む。
「おねえちゃん!おいしいよ!」
「変な味がしない!」
「おねえちゃんにも、おみずどうぞ」
きゃあきゃあとはしゃぐ子供達の中心で、倫子は嬉しそうに笑い、差し出された碗で水をごくりと飲み干した。
「おいしい?」
興味津々で倫子を覗き込む子供達に、倫子はまた笑いかける。
「うまーい!」
一拍置いて、きゃあーっとはしゃいで自分を取り囲む子供達に抱きついた。
弾けるような笑い声が響き、雲雀の鼓膜を刺激する。
彼女達を包む、散乱する陽に煌めく清廉が眩しい。
―――呆れた。
「…なにしてるの」
この寒空の下、そんなびしょ濡れでなにが楽しいのだろう。
「雲雀!」
声を掛ければ、底抜けに嬉しそうな笑顔をそのまま向けたりするから、またバカっぽく見える。
「飲み水問題、解決した!」
胸を張る倫子に、雲雀はもう何度目か解らないが、また呆れた。
(…自分がどれだけ無茶をしたのか、わかってすらいない)
「見れば解る。とりあえずこっちへ避難したら?」
倫子の座る場所は、既に水浸しだ。
砂と水、泥だらけではしゃぐ倫子と子供達には溜め息しか出ない。


