「病人をまとめようよ」
そういう意味で言ったわけではなかったが、しかし倫子は雲雀の言葉に思案してそう答えた。
「病人?」
雲雀が尋ねれば、エリアを見渡しながら続ける。
「健康な人間と病人がごっちゃになりすぎだよ。これじゃ、病原菌が蔓延すんのも当たり前じゃんか」
貧困エリアには病院すらないと聞く。
休養する場所を与えなければ良くなるものも良くならないというのに。
なによりいくら健康体の人間でも、周りに病人がわんさか居ればその影響も受ける。
「…なんでそんなやる気なの」
何故か環境改善に燃えている倫子に、雲雀は呆れたように呟いた。
倫子は眉を片方だけ顰めて、唇を尖らせる。
「ばっか、雲雀。やらない偽善よりやる偽善だろーが」
「…誰が馬鹿?」
正論だが、蛇足から始まったのでそう意気込む頬を思い切り抓んでやった。
ぎゃ、と鳴いて、倫子は尚も続ける。
「…それにさぁ、こーゆーの気分悪いよ」
辺りで奉仕する生徒達を睨むように眺めていく。
こーゆーの、とはどういうことか。
いちいち感情的で抽象的だ。
「…これでここの環境を良くしたところで、ただの自己満足でしょう」
(…甘過ぎるんじゃないの、君は)
だからつい、そんなことを言ってしまった。
なにも考えずに慈善活動をしている莫迦より性質が悪いかもしれない。
「…自己満足でいいじゃん。人間の優しさなんて、そういうもんでしょ」
抓られた頬をさすりながら、倫子は肩を竦めて見せた。
思いのほかシビアに言い切った倫子に、雲雀は目を丸くする。
もっと甘ったれたことを言うかと思えばこれである。
すぐに微笑を浮かべた雲雀は、その眼に挑発的な色を浮かべた。
「言うね」
「ハッ…、誰かさんの毒舌には負けるけど」
倫子も負けじと笑みを浮かべる。
張り合う必要性など皆無なのだが、今は、それが楽しかった。


