「神様は男でしょ?」
「そうだよ、女じゃない」
「なによ!私が間違えたっていうの?」
「まさか。リィの力を信用してるよ。だからおかしいんだ」
「だよねぇ。だって私、ちゃあんと神様の力を辿ったもの」
「おかしいなぁ」
「おかしいよね」
「…いや、おかしいのはお前等だろ!」
完全にふたりの世界に入りきった会話が、あまりに悠長で呆れ果てた。
不審者がこうも和やかな雰囲気を醸し出すとは何事か。
しかも、こちらに妙な力を掛けておきながら、完全無視。
つい、二人の会話に口を出してしまう。
「ちょっと、なんか五月蝿い」
女が不愉快そうに唇を尖らせた。
「いや!うるさいのはお前だろ!つうかウザい!」
負けじと倫子も反撃するが。
「ちょっと、君。リィに失礼なこと言うのやめてよ。僕の大事な姉さんなんだから」
男が、同じ顔をした姉とやらを庇うように立つ。
「ウルセェエ!シスコンは黙ってろガリ男!」
苛々し過ぎて警戒も忘れて口ばかりが動く。
ふたりの間に流れる妙な雰囲気に、今まで抱えていた苛立ちが増しに増した。
「ちょっと、ロゥ。こいつに「ピアノ」流してないの?」
「…流してるよ、リィ。タフな人だね」
「ありえなーい!いかつぅい!」
「うぜぇ!お前ら、めちゃくちゃうぜぇ!」
いい加減、我慢の限界である。
我慢ってなに?食べれるの?状態である。
「やーだー!しかもヤバーン!」
「大丈夫だよ、リィ。僕が守ってあげる。さぁ、本物の神様を探しに行こう」
「そうだね、ロゥ。早く神様に会わなきゃ」
倫子を完全無視して、同じ顔をした男女は楽しげに笑う。
「…かみさま?」
倫子はそこでやっと、彼らの会話に違和感を感じた。
聞き慣れた単語が連発されているのは。
神様───、雲雀。
ゴク…。
『…人間を隷属にして、アダムだけの新世界を作ろうって夢見ちゃってる集団のこと』
(…こいつら、奥田が言ってた裏組織の連中だ)
正体は謎。
能力は未知数。
目的は世界征服。
『…雲雀を付け狙うってんなら、彼以上のアダムが来るだろうし』
―――雲雀以上の、アダム。
果たしてそんなものが本当に存在するのか、倫子には判断もつかないが。


