(ああ、目ぇ輝かしちゃって、幸せなやつ……)
雲雀に盲目的とはいえ、実力は西部箱舟のトップクラスだ。
(性格は難ありだけど、雲雀だって私みたいな役立たずを連れるより、朝比奈を選ぶに決まってる)
虚しくなってきた。
理由なんて思いつきもしないが、なんとなく雲雀を見ていられなくなって、無言のまま地平線を眺めた。
「孤立」した島に、「孤立」した自分。
面白くもない。
「あぁ、そういう手もあるね」
ほら見ろ。
雲雀の抑揚のない声に、倫子は完全に疎外された気分になる。
(―――は…、雲雀なんかに見離されて、だからどうなるっつう…)
「でも」
雲雀の柔らかな声が、鼓膜に届く。
「諂(へつら)うだけの飼い猫より、怖いもの知らずの野良の方が、僕は好きなんだ」
―――え。
朝比奈が息を飲む。
振り返って雲雀を見れば、相変わらず綺麗な表情のまま。
言葉を失った朝比奈達から視線を外し、じわり、瞳がこちらを向く。
青みがかった綺麗な眼が倫子を音もなく捕らえた。
ゴクリ。
「ひ、ば…」
「なにしてるの、行くよ」
朝比奈の名残惜しげな視線には全く興味を示さないまま、その真っ直ぐな眼が近付いてくる。
(…何故か照れる、んですけど)
渦中の男は茫然とする倫子の横を素通りする。
「え、あ、…え?」
「…なにしてるの、置いていくよ」
素っ気ない声に促され、倫子は凛と伸びた背中を慌てて追った。
背後から朝比奈の悔しそうな声が響いて、ざまぁみろと、内心で毒づきつつ。
(…ちょ、ちょ、)
―――嬉しかった。
「まぁ、喜ばせる為に言ったんじゃないけどね」
「読むなよ!クソッ…今のは恥ずかしい!」
「確かに恥ずかしい」
「うっせぇなばか!」
「…全く、口が悪い」
ぐぃ。
「ぶがっ」
抓られたホッペタも、今はそんなに痛くない。
喜ばせるために言ったんじゃないってことは、よく解っているつもりだ。
だけど、だからこそ。
「そんなに嬉しかった?」
「……なんで」
「にやけてるよ、だらしない顔が更に」
冷ややかに一瞥。
「…っ」
恥ずかしい、ったらない、けど。
(…嬉しい)


