「倫子さん…?」
不意に真鶸の声が耳についた。
気付けば、床に座り込み、雲雀のベッドに背中を預けていた目の前に、真鶸がいる。
少しだけ赤くなった鼻先がかわいい。
「どうかしましたか?」
ぼけっとしていたからか、気遣わしげな顔を浮かべている。
倫子はいいやと首を振ると、その小さな頭に手を伸ばした。
「倫子さ…」
この子に触る瞬間、一瞬でも躊躇してしまう自分が嫌いだ。
緩く撫でて、その小さな頭と雲雀と同じ匂いにほっと息を吐く。
(…構造は同じでも、真鶸と私は違いすぎる)
構造のほうも施術過程も、初期段階の実験体だった自分とは違うのだろう。
(桐生は、つまり雲雀の為に真鶸の体にメスを入れたんだ)
雲雀という神の下で、真鶸は希望。
(―――じゃあ、私は)
真鶸は、私とは違う。
「当たり前でしょ」
ぼす。
殴られた。
べし。
蹴られた。
ダブル暴力。
「…痛いんですけ、どっ」
ばし。
今度は額を容赦なく叩かれた。
一体なんなんだと真鶸と共に眉を寄せれば、当事者は至って涼しい顔をして口を開く。
「君と真鶸が同じだなんて、そんな気持ち悪いことやめてよね」
気持ち悪いことて。
―――慰められている。
しかし多少の違和感を覚え、反論しようと口を開けば。
「…君は君だからこそ、僕にとって価値があるのに」
吸い付かれた。
開きかけの唇の上部を食むように咥えられて、呼吸が止まりかける。
真横には呆然とする真鶸。
まだまだ純情な真鶸の前で、キスは続く。
そしてまだまだ離れないクソスズメを、倫子は真っ赤になった顔で睨み付けた。
恥ずかしすぎて鼻血が出そうになった。
「…っ、ご、ごめんなさいっ」
何故おまえが謝る、と言わんばかりの声を出し、顔を真っ赤にして真鶸は逃げ出した。


