「このような場所まで資材を運ぶのも大変だったでしょう。
全てがここで入手出来るとも思えませんし、流通の路というわけでもない。
となれば、わざわざここを選んで移住したということですよね。
あなたの仰る、知られていない田舎から」
相手の言葉を待つことすらせずに、珍しく次々と自分の言いたいことだけを言うヴァン。
テーブルに置かれた村長の手がぴくりと動いた。
しかし口を開くことはなく、黙ったままの村長に、ヴァンはすっと目を細めながら料理から手を離す。
「何故ここに?」
たっぷりと時間をとって、村長は漸く口を開いた。
「……何でですかな?」
その言葉に微笑みを浮かべながらも、ヴァンの瞳が鋭く光ったのを、玲奈たちは気付いた。
玲奈の頭の中に、あの川辺でのヴァンとのやりとりが思い浮かぶ。
『人は追及されたくないとき、疑問で返す』ことが多いとヴァンは言った。
半ばハッタリで、全てがそうな訳ではないと後からきいてはいた。
だが、村長の緊張した面持ちを見たら、ヴァンの言ったことはあながち外れていないのかもしれない。