三日月の雫


柚羽がアパートを引き払ったという事実。

でも僕の中には、あの頃のような絶望感なんてなかった。


時間はたくさんある。

そして何よりも、自由になったこの身体。


僕は気晴らしにと、国道へと向かった。


国道のお祭り騒ぎは相変わらずだった。

ただ今までと違ったのは、暴走するユウヤたちが僕の姿に全く気付かなかったこと。



『永輝さん!』



僕の姿を目ざとく見つけると、ユウヤは人懐こい笑顔でバイクを止めて駆け寄ってきた。

そんなユウヤの姿をもう二度と見れないのかと思うと寂しかった。


僕の目の前を走り去るバイクと車の集団。

僕は静かに笑いながら見送る。


――事故なんて起こすんじゃないぞ。