三日月の雫


まるで別人を前にしているようだった。

キツネにつままれたような気持ちで、僕は車のカギを取り、かんなの後を追った。


雨を避けるようにして車庫に行き、車のドアを開ける。

エンジンをかけると、かんなはすぐにラジオをつけた。



「珍しいな」



かんながラジオをつけることも、珍しかった。

かんなと車に乗ると、かんなの声がBGM代わりになっていた。



「あたしだってラジオを聞きたい時もあるのよ」



口を尖らせてかんなが言う。


車のワイパーは右に左にと追いかけっこを繰り広げながら、雨を取り除いていく。

どんよりとした雲。

湿気を消すように動かしたエアコン。

暗くて冷たい空気が僕を包む。