身動きすることも忘れ、ただ、かんなをじっと見つめる2人。

そんな2人に挟まれている柚羽も、かんなを真っ直ぐに見ていた。


今にも、泣き出しそうな顔。

ここに来たことを、僕はひどく後悔した。


どうして、この店を避ける、うまい言い訳をすぐに思いつかなかったのだろう。




「あっ、えーっと……、前に……」



ピンと張り詰めた空気を何とかしようと、村岡が顔を引きつらせながらも懸命に笑顔を向ける。



「いつも永ちゃんがお世話になっています」



僕の視界に僅かに映るかんなの笑顔。



その笑顔が……。

そして、その言葉が……。

柚羽にだけ向けられているように感じた。