それ以来私の胸の中には

小さな卵が存在するようになった

その卵はそれ自身の存在として

私と死の関係の中の

恐怖以外のなにかを暗示していた

死について寒気の中で考えたあと

私は死の怖さに集中することが

できなくなった

それは良いことなのか良くないのか

私にはよくわからなかったが

少なくとも気持ちの奇妙な安定が

私を包んでいてくれた



あれから私はこの架空の卵を

想像の中でいつも考えていた

卵は私のなかでなにか言いたげに

存在していた



ある日私は自分に残された時間が

あとどれほどあるのか考えていた

院長は言った

もってあと半年…でなければ3ヶ月

その時間が私にとって長いのか

それとも短いのか

普通の人生から大きく外れた私には

その時間の感覚さえ不確かだった



私はその時「明日死んだら」という

極論を考えていた

明日私が死を迎えるとしたら

私は今日どのように過ごすのか

このままなにもせず

一日をいつものように送る

もしそうしたら私は死の時に

安らかだろうか?



私はその時心の中の卵が

後悔に疼くのを感じた

いや違う

これは後悔自身だ

この卵は

やり残したこと



そしてこれをそのままにして死ぬ時

これは《後悔》という名前に変わる



この私に「まだするべきこと」が

残されている…!




確かにそれは

ひとつだけ

思いあたった