診察室のシャーカステンに

並べられた検査フィルムを

青年医師は眺めていた

私がナースに車椅子を押され

診察室に入ると

彼はカルテに手を掛け

言葉を探しているようだった

しばしの沈黙のあと

彼はこちらを見た

私と目を合わせずに…



「…もっと早く気づくべきだった…

申し訳ない」

彼の言葉は謝罪から始まっていた

「なにかありましたか」

私が気を遣うほど

彼は何かためらっていた

「…いや…こんなことが病院で起こ

ることが信じられないが」

彼は明らかに私に言いにくい何かを

これから説明しようとしていた

「…君の最初のCT検査の画像」

「ああ、脳神経のですね」

あの元担当医の検査のことだ

「…画像の一部が足りないことがわ

かった…故意にその部分が抜きとら

れていたんだ」

「それがなにか?」

「…昨日のMRIに…」

彼は大きく息を吸った

「…腫瘍が見つかった」

「え…」

「抜き取られたCT検査の画像に…

写っていたはずなんだよ…ちょうど

そこが足りないんだ…ちょうどその

部分が一枚…」

彼はMRIの画像を指差した

そこには三日月の形の影が

まるで私を嘲笑うかのように

写りこんでいた