気がつくとベッドの上だった

酸素マスクとチューブの中にいた



ひとりでに涙が流れていた

もしかしたら

誰かのために私は殺されたのか

なにがあったのかは

わからない

ただ

不思議と憎しみはなく

死んでも良かった

とさえ私は感じるのだった

胸の中に切なさだけが広がり

疼く

あの男は誰だろう

私の大事な人だったのだろうか

それともただの曖昧な夢が

造り上げた架空のマボロシ

あの担当医との

秘密の饗宴のイメージが

反映しているだけの…



それとも封印された記憶の中の

実在する恋人?

それならば…




恋人に殺された私

たまたまこうやって生きて

自分が誰かもわからず

生き続けている



知ってるのだろうか?

もし私が

誰かに殺されかけたのだとしたら

私がまだ生きていることを

そのひとは知ってるんだろうか…


こんな形で

此処にいることを





私を完全に

抹殺しなければならないなら

いつ戻るかも知れない記憶を

喪失している元恋人を

どう思うだろう

揚がらない死体

生死のわからない行方不明の

決して結ばれてはならない

“ゲイ”の秘密の恋人





…不安だろうな

いまごろ恐怖におびえて

生きた心地もしないだろう



本当に


ちゃんと殺してくれなかった

見知らぬ"彼"に同情するぐらい

私は死にたくなった


互いに救われないね


今のままじゃ…