青年医師が私の担当医を

その後どうしたのかは

私には語られなかった

院長が

どのような判断を下したのかは

はっきりとはわからなかった

少なくとも次の日から

目覚めると担当の医師があの男から

院長へと変わり

彼は病院から消えてしまっていた

警察は特に介入することなく

私のレントゲン撮影だけが

予定通りに行われた

口の中のリングは

取り外されていた

私が薬で意識を失っている間に

誰かが外したとしか考えられないが

多分病院側としたら

証拠隠滅だろう

あとは私を言いくるめるだけだから

担当医をかばうためではなく

病院自体の為に



病院を告発しようと思えばできる

舌に穴の空いているうちなら

しかし

今更そんなことに意味も動機もない

私はあの快活な青年に

あの淫靡な闇を

見てもらいたかっただけだ

たぶん

自分で思ったよりも

あの闇の時間が辛かったのだろう

このしばらくかけて

奴隷のようにされた期間が

自分の中の様々な意識を

見ざるを得なかったことは

変えがたい時間ではあったが…





恨みはない

だがまぎれもなく解放感があった








しばらくして思った通り

院長から呼び出された

ナースが私の車椅子を押し

エレベーターで院長室へと向かった