ある朝目覚めると

口の中に違和感があった

深夜の記憶がなかった

毎夜の狂宴の記憶が

この日に限ってない

目覚めがいつもと違っていた




口の中に

何かが入っている





歯に固いものが当たる音がした

かすかに血の味

萎えた足を引きずって

ベッドの横の鏡の前に立ち

おそるおそる口を開けた



舌に銀色の小さなリングが

左右に1つづつ埋まっていた

思わず指先で取ろうとする

取れない

しっかり舌の肉に食い込み

肉を貫き

輪が閉じていた

自分の指先で

はずれるようなリングではなく…



ひとじゃない



家畜




…かるいめまいがした

舌のリングが頬の内側をかすめる

ゾクッと全身に粟立つ感覚

こんな異物にまで

毎日毎秒なぶられて

生きていく

それでも

なにもない

なにも私には

身体を支えられず床に崩れ落ちた

こんなになっても

きっと夜になれば

私は受け入れてしまう

あの男の非道な行為を

家畜の餌の時間のように

唇から唾液を垂れ流して…

絶望と愉悦が襲ってきた

発狂するかも…

そうしたら

どれだけ楽になれるだろう…