いつものように無表情な顔をした

担当医の前に腰掛け

いつものお決まりの触診が始まる

脈と血圧のチェック

瞳孔を片方づつ

ペンライトで照らしたあと

下瞼の血膜の色を指で確認する

「はい、口を開けて」

言われるままに口を開き

担当医が喉の奥を

無表情に覗きこむ

ワゴンの拑子立てから

ステンレスの舌圧子をとりだし

もっと奥を良く見るために

彼はゆっくりと

口の中に金属片を滑り込ませた



いやな予感がしたのも束の間

口の中で金属片が舌をなぞりあげた

その瞬間

真夜中にしかやってこない

あの感覚が

舌全体に広がっていった




あ…

うそだ

だって こんな…

こんな異物でも…?

…だめだ

金属片が左右に動かされるたびに

全身をゾクッとおぞけが貫いた

だめだ…耐えられない

口の中をそんな

あ…

体が勝手にびくんと痙攣した

…だめだ…これ以上続けたら…



しかしその異常な感覚を

もう止めることはできなかった