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 僕はその日の夜の勤務を終えて、疲れた体を引き摺りながら、自宅へと戻るつもりでいた。


 帰る間際に坂上が、


「飲んでいけよ」


 と言って、温かく、湯気の出ているコーヒーの入ったカップを手渡す。


「あ、すみません」


 僕がそう言って、淹れてもらったコーヒーに口を付ける。


 やはり苦い。


 坂上はエスプレッソのコーヒーしか淹れてくれないし、元々濃い目が好みらしい。


 僕は、


「いただきました。お疲れ様でした」


 と言って、飲み残さずに残らず啜り取ると、会社のフロアを出た。


 そしてロッカールームへと戻り、制服からシャツに着替える。