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「あたし、来年四月から奨学金を無料でもらえることになったの。たまたまだけど、成績がいいから」


「そう」


「うん。だから、これからは奨学金とバイト代で何とか暮らしていけそう」


「俺も借りてるけど、さすがに勉強してないし、君と違って劣等生だからな。卒業まで借り続けることになると思う」


「でも駿一は作家志望なんでしょ?じゃあ、そっちで生計立てられるようになれば、それでいいじゃん」


「うん。自分で言うのもなんだけど、まだ若いから、しっかり文芸やるよ」


「頑張ってね。陰ながら応援してるから」


「ありがとう」


 僕は礼を言って、手元の文芸雑誌を閉じ、読んでしまっていたページにしおりを挟む。


 そして息をついた。


 コーヒーが美味しい。