危険な誘惑にくちづけを

 こわい……!

 すべてを見透かすように、強く。

 その、怒りとも、悲しみともつかない瞳の輝きに、怯えて息を呑む。

 佐倉君は、そんなわたしに、大きなため息をつき……

 そのまま。

 もう一度わたしに、覆い被さることなく。

 乱れた自分の服を着直した。

「……そうだね。
 酒で潰して、いきなりコレじゃ……
 春陽ちゃんのココロを貰おうとしたって……
 いくらなんでも、無茶……か」

 お酒で潰したって……!

「え……っ!
 もしかして、あのジュース!」

 やっと思い当たって、叫ぶわたしに、佐倉は、いつもの調子で微笑んだ。

「酒。
 ソルティドッグって言うの。
 春陽ちゃんは、知らなかったのかい?」

「お酒だったなんて、わたし、ちっとも……!」

 知らなかった。

 気がつきもしなかった。

「……やっぱり、な」

 佐倉君は完全に、いつもの調子で肩をすくめ、わたしは、ココロの片隅で、吐息をつく。

 さ……佐倉君は。

 莫迦なコトをあきらめて、このまま、何もせずに帰ってくれる……のかな?

 そんな、わたしの希望を、まるであざ笑うかのように、佐倉君は微笑んだ。