危険な誘惑にくちづけを



 まだ、お互いに裸のまま。

 紫音の腕にすっぽりと、抱きしめられたままで。

 わたしはきいた。

「紫音は……
 フランスでも元気だった?」

「ああ……
 まあ、普通にやってるな」

 ちょっとそっけなく、紫音はささやいた。

『普通』って言ったって、ねぇ。

 住んでいるところが、仮にもフランス、だから。

 日本とは、違うコトやって。

 違う風景の中で、暮らしているハズだから。

 海外の生活でのなにか、変わったこととか。

 面白かったこと、とかを聞きたいのに。

 紫音は、あまり……っていうか。

 ほとんど、自分のことはしゃべらない。

 ……ま。

 いつものことだけど。

 そのかわり、紫音は、わたしに聞いてきた。

「春陽の方は、どうだ?」

「……えへへ。わたし?」

 もちろん。

 わたしの方は、紫音にしゃべりたいこと、一杯ある!