危険な誘惑にくちづけを

 
 それでも。

 生徒たちが作ったお菓子やパンを中心に、店が出るし。

 ちょっとしたゲームをしたり、芸能人が来たりする。

 昨年は、紫音が来なかったので、今年こそは、一緒にお店めぐりを……したかったのに。

 これじゃ……また、無理っぽい。

 それに。

 紫音の昔の話も聞きたかったはずだったのに……!

 あ~あ。

 もう、ため息が出ちゃうじゃない。

「今年ってさぁ。
 インディーズだけど、ちょっと有名なバンドが出るはずだったよね?
 ホラ、Z(ぜっと)とかって言う」

 水島の話に、大きなため息をついちゃった。

「……知ってる。バラードとかも上手いとこでしょ?」

 わたしも、そのバンドが好きだから、なおさら一緒に聞きたかったのに。

「あそこのボーカル、ちょっとだけ春陽の彼氏さんに似てない?」

「……レオンのコト?
 全然っ、まったく、似てないっ!
 紫音の方が百倍カツコイイ~~」

 元気を出そうとしてくれたらしい、水島に思わずそう、言っちゃった。

 いつもより、明らかに、イライラしているわたしに、水島は、深々とため息をついた。

「重症ねぇ。
 早く仲直りすればいいのに」