「ふーん『パ・トゥ・シャ』のケーキね。
 ま、ココのケーキがキライなヒトって、あまりいないわよね」

 白とピンクが基調の。

 かわいい、お菓子のお城みたいなケーキ屋の前で、水島は、しみじみ言った。

 だけども。

 子猫の足跡みたいなマークのついた『パ・トゥ・シャ』の入口を見たとたん。

 佐倉君は、ここで待ってる、と、外のベンチを指差した。

「なんで、入らないの?」

 意外な言葉に、わたしがクビをかしげると、佐倉君は、ちょっとひきつった顔をしていった。

「……いや、オイラ。
 なんとなく、こういう。
 いかにもきゃぴきゃぴっ、としたスィーツの店は入りづらくて」

「……これから、パテシェになろうっていうヒトが?」

 意地悪く言う、水島の言葉に、佐倉君は、むっとした顔をして言った。

「……男だから、だよ。
 オイラが店を出すなら。
 もっとシックで、皆が入りやすい店にぜっったい、してやるのに」

 ふーん?

 そんなモノなのかな?

 でも、紫音は、ここでバイトしてたっていうし、良く判らないや。

 積極的に中に入りたがらない佐倉君を、その場に残して。

 わたしたちは、店の中に入った。