危険な誘惑にくちづけを

 だって、ねぇ?

 佐倉君の告白ってば、いつもこんな感じなんだもん。

 何が、どこまで本気なんだか、さっぱり、わからない。

 しかも、わたしたち……って言うか。

 女の子たち全般には、こんな軽い感じで、誰にでも話かけて来るクセに。

 男子相手だと、だいぶ態度が違うようだった。

 佐倉君が通ると、一歩下がるヒトがいたり。

 話かけると、なんとなく、引きつった笑顔を浮かべたり。

 実習の調理班や、お店巡りでも、佐倉君と一緒の班になりたがる男子は、いないくせに。

 佐倉君の悪口やウワサをたてるヒトも、いない。

 佐倉君と女子との会話を、こわごわ見ている、って感じだ。

 その、佐倉君は。

 去年、初めてわたしと会ったその日から、ほぼ毎日。

 わたしに『好き』って、告白してくる。

 冗談なのか、本気なのか。

 それに、わたしの他に、何人の女の子たちに告白しているのか、判らないノリで。

「あ~~あ。
 オイラが、どれっくらい本気なのか。
 春陽ちゃんに、ココロを見せられれば、楽なんだけどなぁ」

 佐倉君は、そう、冗談っぽく言って、軽く笑った。