危険な誘惑にくちづけを

「この、たぐいマレなる美貌を持ったオイラが。
 女の子に、避けられたり、嫌われたりするわけがない」

 うう。

 いつも、思うんだけど。

 佐倉君ってば、そんなこと、本当に思っているのかなぁ。

 アゴに手を当てて。

 きらりんっと口元が光りそうなほど、輝く笑顔をこっちに向けているのはいいんだけど。

 どっちかって言うと、カッコイイ、って言うより。

 ……コミカル、よねぇ。

『笑える♪』

 なんて、言ったら。

 傷つく……んだろうなぁ。

 やっぱり。

 悪いヒトじゃないんだけど。

「やっぱり、アンタって。
 お莫迦よねぇ」

 しみじみ呟く水島に。

 佐倉君はええ~~っと口をとがらせた。

「な~~ぜ~~?」

「るさいわねっ!
 そんなコト、胸に手を当てて考えなくったって、判りそうなもんじゃない!」

「ぶ~~
 桃花ちゃんって、相変わらず、きっついなぁ。
 でも、そこがかわいいトコなんだけど」

「……マゾか、アンタは」

 楽しいなぁ。

 横で見ている分には、漫才だ。

 二人の駆け引きに思わず笑っていると、佐倉君がこっちにセリフを振って来た。

「ね~~春陽ちゃんも、オイラのコトそう思ってる?」

「なぁに?
 佐倉君が、その。
 お莫迦ってこと?
 それとも、マゾだってこと?」

「もー
 春陽ちゃんまで、そんなコト言わないでよ~~
 オイラ、春陽ちゃんのコト。
 世界で一番好きなのにぃ~~」

「はいはい」

「あああっ!
 信じてないし!」