危険な誘惑にくちづけを

「春陽ちゃん、今、オイラのコト呼んだ?
 桃花ちゃんも、見てたっしょ?
 いやぁ。
 ガッコで一、二を争う、美人ちゃん達に、注目されるなんて、嬉しいなぁ」

「うぁ、出たな!
 迷惑な、莫迦!」

「ち、ちょっと、水島!」

 今の、水島との話が声が大きかったんで、気になったらしい。

 佐倉君は、自分のスケッチブックを抱え。

 イスをずりずり引きずって来て。

 すっかり、わたしたちの隣に陣取る気、満々だ。

 しかも。

 ロコツにイヤな顔をする水島をモノともせずに、佐倉君は、にまっ、と笑った。

「ね、ね?
 二人して、楽しそーにナニ話してたの?
 オイラも混ぜてよ」

 か、軽っ!

 宮下先生も軽いヒトだと思ってたけど。

 このヒトは、もっと軽い。

「……その。
 佐倉君には、関係……」

 【無い】って、はっきり言おうとしたのに。

 水島が、勝手にわたしのセリフをもぎ取って言った。

「春陽の、彼氏の話よ!」

「……へ?」

 佐倉君は、驚いて、目を見開いた。

「彼氏って……!
 春陽ちゃん!
 とうとう、オイラと、ちゃんと付き合ってくれる気になったって、こと!?」