「……二か月ぶり……だ。
 ……春陽……」

「……ん」

 唇に……

 首に……

 胸に。

 何度も、何度も、優しいキスの雨を降らせながら。

 紫音は、甘く、ささやいた。

「春陽……愛してる。
 どんなに遠く……離れていても……
 春陽のコトを考えている……」

「……わたしも……
 わたしも、よ?
 ……紫音」

 切なくも、聞こえる紫音の声に。

 わたしは、そっと彼の背中を抱きしめる。

 そう。

 紫音は、今。

 日本を遠く離れたフランスに、いた。

 近い将来、パテシェになって、お店を持つために。

 お菓子作りの、本場の国に留学中だったから。
 
 本当は。

 日本とフランスを結ぶ、飛行機代が。

 バス代程度の感覚しかないほど、紫音はお金持ちで。

 やろうと思えば。

 一週間に一度ぐらいのペースで、日本に返って来れるはずだったのに。

 やっぱり、フランスの『距離』は、遠く。

 時間的な問題もあって、紫音は、結局。

 なかなか日本には、帰って来られなかった。