「春陽……?」

「……ん。 大丈夫」

 わたしを抱きしめている、紫音の手の動きが。

 なんだか、アヤしい。

 今夜、三回目の愛の確認に向けて、準備中みたいに。

 熱を帯びてくる。

「もうっ……し……おん……!
 そんなとこ……触っちゃ……!」

「……イヤか?」

 イヤじゃないけど!

「……恥ずかしい」

 その告白に。

 紫音は、きっと。

 わたしの背中を抱いて、意地悪く笑ってる。

 だって、紫音の手!

 ぜんぜん、止まらないんだもん!

「し……おん……」

「……今年の夏は。
 なるべく多く、日本に帰って来られるように、努力しよう。
 一緒にケーキ作りが、出来るように」

「本当? 嬉し……」

 わたしは、言葉を全部、紡げなかった。

 だって、紫音が。

 後ろを向いているはずのわたしを、くりん、とひっくり返したかと思うと。

 そのまま、本格的に、唇同士を重ねる、くちづけを始めたから。

 その、とろけそうなほど、甘いキスに、幸せを感じて。

 わたしも、また。

 紫音と同じように。

『現在』と『未来』だけ、見て行こう、と思った。