危険な誘惑にくちづけを

『じやあ、今。
 春陽ちゃんは、紫音ちゃんと一緒にいるわけじゃないのね?』

 薫ちゃんの質問に、わたしはちらり、と佐倉君を見てから言った。

「……うん」

『まったく、紫音ちゃん、何してるのかしら……!
 さっき。
 日本に着いてから、紫音ちゃんの携帯に電話しても、繋がらないし。
 なにか、嫌な予感して、春陽ちゃんのトコロに電話して、正解だったわね』

「薫ちゃん……」

 紫音が、今どこで何をしているのか。

 わたしだけじゃなく。

 幼なじみ兼、仕事上のパートナーだった薫ちゃんにも何も話をしていない、この状況に、言葉が詰まる。

 薫ちゃんも、困ったように大きくため息をつくと、心配そうな声を出した。

『じゃあ、ねぇ、春陽ちゃん。
 いきなり、で本当に申し訳ないんだけど……
 今日は、これからあたしに付き合ってもらっていいかな?
 紫音の行き先をちゃんと調べたいんだけど……!』

「もちろん……!」

 荷物がある上、紫音を当てにして特にホテルの予約をしていないの、って言う薫ちゃんに。

 今すぐ、部屋に帰るから待ってて、って言うはずだったのに。 

 邪魔をしたのは、佐倉君だった。