アルトサックスの音は、女性の声に似ている。 最初にそう言ったのは、誰だったのだろう。 アレンジをきかせながら、考える。 だとしたら あたしのサックスは先生の耳に、 あたしの声として届いているだろうか。 暗い客席のその奥 ライトを浴びていなくても、あなたの姿は光って浮かぶ。 世界にはこんなにたくさん人間がいるのに あたしにはもう、あなたしか見えない。