つまりお婆ちゃんはずっと達郎の母親代わりをしてきたワケだけど、それについてはまた後日。

「先週3日ほど徹夜したもんで、疲れが出たらしい」

「3日も徹夜したの?」

そりゃ体調崩すわ。

「なんでまたそんなことしたの?」

達郎は机の上を指した。

指先を追うと、そこには洋書のハードカバーがあった。

「その本を翻訳していたんだ」

「これを?」

あたしはその本をパラパラとめくった。

英語ではなさそうだが、かといって何語かは分からない。

スペイン語とフランス語とスワヒリ語のミックスと言われてもたぶん信じただろう。

「なんで達郎がこの本の翻訳をするのよ」

「大学のOBに出版社の人間がいてね。教授あてに翻訳できる人間はいないかという話が来て、オレにその役目が回ってきたわけ」

「よく引き受けたわね」

「就職活動の一環だよ」

あたしは唖然とした。

「あんたから就職なんてフレーズが出てくるとは思わなかった」