「ならいいんだけど」

あたしはベッドに腰かけた。

「達郎、今日のニュースはもう見た?」

「今日はこれにかかりきり。新聞も読んでないんだ」

それじゃまだ知らなくて当然か。

「今日、西本春代が逮捕されたわ」

キーを叩く達郎の手が止まった。

「本当か?」

モニターからこちらへと視線を移す。

「西本殺害の実行犯は、春代だったのよ」

事件のあった夜、春代は西本と山室のやり取りを偶然耳にした。

そして西本が山室に遺書を差し出したことを知った春代は、西本殺害を決意したのである。

何故か。

「春代と山室は不倫関係にあったのよ」

西本は家庭で、仕事場で暴君のように振るまっていた。

そんな西本に一番近い存在である春代と山室は、互いの境遇に同情心を抱いていた。

年齢が近いこともあって2人が深い仲になるのに時間はかからなかった。

「春代は西本と別れたくて仕方なかった。でも西本は離婚に応じようとはしなかったの」