西本の車を別荘に置いたまま帰るには、どこかでタクシーを呼んだりしなければならない。

周辺の訊き込みも効果がありそうだ。

「それに青酸カリなんてのは入手経路が限られてる。その線から何かわかるかもしれないぞ」

「春代も警察で保護を約束すれば、真実を語ってくれるかもしれないわね」

事件解決の糸口が見えてきた。

あたしは勇んで立ち上がった。

「すぐ本部に戻るわ」

「そうしてくれ」

そう言うと達郎は再びベッドに倒れ込んだ。

「達郎!?」

「ちょっと頭を使い過ぎたから寝る」

達郎は目を閉じ、ものの数秒もしないうちに寝息をたてはじめた。

あたしは達郎の手から転げ落ちた缶コーヒーを拾うと、枕もとにそっと置いた。

「ありがとね、達郎」

そうつぶやくと、あたしは静かに部屋を出た。