「あたし好み?」

唐突な物言いにあたしは首をかしげた。

「ちょっとした可能性を考えてみたんだけどな」

達郎は先ほどのFAXを手に取った。

「これから殺されることを知らない人間が遺書を書くだろうか」

…何を言ってるのだ?

「自殺する気のない人間が遺書を書くだろうか」

何だか達郎の言葉が素通りしていくような感覚に陥ったが、キッパリ「ない」と言って首を振ってみた。

「だとするとこの遺書はなんなのか?」

「さぁなんでしょう」

言いたいことがサッパリわからない。

あたしは引きつった笑いを浮かべながら達郎の言葉を待った。

「西本は脱税に関しては完全にクロなんだよな?」

それは秘書の山室も認めている。

「じゃあそれをふまえた上で話をするぞ」

達郎はゆっくりと上体を起こした。

「3日前、捜査の手が自分に伸びてくるのを察した西本はあることを思いついた」

あること?