月と太陽の事件簿8/微熱混じりの推理

「じゃあこういうのはどうだ」

達郎は人指し指と中指を立てた。

「こうピストルを突き付けるなんかして、西本をおどし遺書を書かせる。その後で…」

「無理やり青酸カリを飲ませて自殺に見せかけたってこと?」

「…ダメか?」

あたしの冷ややかな視線に達郎は肩をすくめた。

「なんか回りくどくない?」

そんなことしなくても他に方法はありそうな…。

「だいたいが誰が西本を脅すのよ」

「選挙の直前だ。どの党だって政治スキャンダルは避けたい。恐らくは西本の所属する政党の党首が…」

「ちょっと待って」

あたしは右手をあげた。

「政治スキャンダル避けたいって言ったわよね」

達郎はうなずいた。

「脱税疑惑の責任をとって自殺するのって、政治スキャンダルそのものじゃない」

「あ」

達郎の動きが止まった。

やはり熱のせいか、いつもと勝手が違うようだ。

達郎はアイスノンを巻いたままの首を器用に回し始めた。