良子を後ろに乗せて自転車は本屋を通過し、商店街を爽快に走り抜けるとのぼり坂に差し掛かった。

「う……時間がない!!とばすぞ」

玉置はいきなり立ち上がりグイグイとペダルを踏み込み、自転車は左右にグラグラ揺れる。

「うぎゃぁッ!!お、落ちるぅー」

「あ?ちゃんと掴まれよ」

「ど、どこに!?」

良子の目の前には立ち漕ぎする玉置のお尻が上下している。

「どこにィィ!!うぇぇぇぇぇい!!」

グラッと傾いた瞬間に良子は玉置のお尻に両手でしがみついた。

「ぐぉぉぉぉぉぉ!!ケツは止めろぉぉ。うわッ、ズボンが下がるぅぅぅ」

「ご、ごめ、ごめんなさぁぁぁ……うぇぇぇぇぇ──」

(ズボンは下がらないでぇぇぇ!!)

良子は強く強くそう祈った。

「ぎゃぁ!離せぇぇ!!コケるッ、ぶつかるッ」