そして『心配』とはかけ離れた母の声のトーンに良子は反論するのも早々に諦めた。

「ねぇ、お母さん、玉置君って覚えてる?小学校の時の……」

「え~?タマキ?東北の?」

「それはマタギ!熊とかシカとかの猟師さん!」

(確かに熊とかやっつけちゃいそうな体格してたけどね……)

良子は玉置のガッチリした肩を思い出した。

「冗談だってばぁ。玉置君?小学校の時にヨッちゃんが一人でいじめられてるって騒いでた、玉置君?」

「『一人で』ってトコが引っかかるけど……その私をいじめた玉置君──」

「それがどうしたって?」

「うん。……偶然図書館で会って、また勉強教えてって言われたんだぁ」