しばらくの静寂の後、脳ミソをグチャっとかき混ぜた様な感覚が頭を駆け抜け、良子は目眩を覚えた。

そんな良子の脳内パニックなどまるで気づかない玉置は淡々と低い声を響かせる。

「じゃあ、連絡先交換しとかないとな。携帯出せ」

(……どんだけジャイアン?)

静かに携帯を献上する良子。

(……どんだけのび太?)

良子は精一杯の抗議の気持ちを込めて玉置を睨んだ。


「よし。赤外線交信しといたからな。おッ、時間がねぇ」

「う……うん」

「じゃ、近いうちにヨロシク頼むぜ?」

「……はい。こちらこそ……」

(ジャイアンならジャイアンらしく男の子をいじめてればいいのに……。スネ夫と遊んでガハガハ笑ってればいいのに……)

なぜ今ごろ真っ赤な頭で勉強をしたがるのか、謎は深まるばかりである。

良子は返してもらった携帯を握ったまま呆然として、去っていく下品な赤い頭を見送った。