Sin

近くにあった木の板で、窓ガラスを思い切り叩き割る。

「なんだ!? 誰だ!」

多少動揺している父親の声。ジャックは厚いカーテンを掴み、引きちぎった。アレクセイらしき姿が見え、迷わず窓から部屋に入りこむ。

澱んだ空気。微かな異臭。

ベッドの上でぐったりしているアレクセイは頬がこけ、顔は殴られて赤紫に変色していた。

ジャックの姿を見て小さく、先生、と呟く。助けを求めるように伸ばした腕はほぼ骨と皮に近かった。

「……“寝込んでいる”と言いましたよね」

怒りの篭った声に父親はふんと鼻をならす。

「人のうちの事に口出しするな。不法侵入だぞ、警察を」

「呼べよ」

ジャックは低く唸るように言った。自分が実習中の身だということも、野次馬が集まって来ている事も、怒りのあまり意識外に追いやられていた。